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全国には1,000軒を超える多くの味噌や醤油の醸造所がありますが、残念ながら毎年毎年、多くの醸造所が姿を消しています。それは日本の文化をどんどん蝕(むしば)むように、そしてそれらを元に戻すということは、残念ながら不可能です。
昔は選択の余地なく家庭で使われていた「地元の味噌や醤油」でしたが、現在は物流と情報の均一化によりどこでも「全国の味噌や醤油」が手に入るようになり、消費者の方の選択が広がりました。
「良いもの」の定義が共有されることによって競争が起き、技術も高まり、良いものが安く手に入るようになったと思います。
一方で、小さな世界で生き抜いていた醸造所は共有された「良いもの」に迎合せざるを得ず、生き残るために地域の味を捨てたり、そして捨てなかった醸造所は姿を消したりしているのが実情です。
そのような状況を「それが資本主義だから仕方がない」というのではなく、先ずは「地元の味を使ってみる。」という選択肢を捨てないで欲しいと思うのです。
残念ながらそれはほとんどの場合、世の中で共有されている「良いもの」ではないと思います。
だけど、自分が生まれた地域の味は、なぜこのような味なのか?どのような背景があってこの味になったのか?なるほど、この調味料があるからこの地元料理があるのかと、地域の食文化を学んだり、その調味料だからできる家庭料理を作る楽しさを感じられるはずです。
「無添加だから」「つくり手の想いに共感したから」といった選択はもちろん大事です。ただそれだけではなく「地元のメーカーだから」という最もシンプルな選択を改めて大切にして欲しいなと思うのです。
この状況で残っている醸造所です。信念なく、いい加減な気持ちでつくっているメーカーはありません。全員に共有された「良いもの」ではない、そこに生まれた自分だけの「良いもの」に触れてみてはいかがでしょうか?