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【特集】味噌はどうやってできるの?

~新人スタッフの工場見学~

新人の私(2015年11月入社)は、味噌を製造している会社に入社したにもかかわらず、お恥ずかしながら味噌の製造過程を詳しくは知りませんでした。麦や大豆から作られていることは知っていたものの、麦や大豆がいったいどのような工程を経て味噌になっていくのかちょっと不思議でした。そこで、味噌がどのようにできるのか先輩スタッフに一から教えてもらうことにしました。

先ずは簡単な味噌の仕組みを学ぼう!

味噌には麦みそ・米みそ・豆みそなどいろいろな種類があり地域によって好まれている味噌は違います。ここでは弊社の所在地である山口県で主流の麦みそについてお話したいと思います。

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左:光浦の麦みそ(山口県産の大豆を使用した麦味噌)
右:田舎みそ(塩分控えめの甘口の麦味噌)

「麹(こうじ)」という菌の不思議な作用で味噌はできる!

味噌は発酵食品の仲間であることは知られていますが、麦や大豆はどのように発酵して味噌に変わっていくのでしょうか。

その最大のひみつはやっぱり「麹(こうじ)」のようです。麹とはカビ菌の一種。麦に麹菌である種麹(たねこうじ)を撒いて麦麹を作り、大豆や塩などと合わせて発酵させ、麦味噌は作られています。
「カビ」と聞くと「食べ物なのに大丈夫なの?」と思ってしまいますが、もちろん食品として食べることができる菌です。食品の中でよく知られているおいしい菌には乳酸菌や納豆菌などがありますが、麹もこれらの菌と同じように「おいしい」と感じられる菌の一種です。

空気中には様々な菌が混在しています。その様々な菌にそれぞれ好みの温度や湿度・場所があるので、良い麹を作るためには温度や湿度の管理がとても重要です。麹の好む温度・湿度で麹を寝かせることで、麹菌が活発に活動しやすい環境を作り発酵させていきます。

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こちらは麦麹の写真です。蒸した麦に種麹をつけた日から2日経過した状態です。表面の白くふわふわしたものが麹の菌糸です。麹の酵素ででんぷんやたんぱく質などを分解しながら繁殖しています。麹は食べてみると甘いんですよ。
この麹が大豆や塩と合わさり発酵することでおいしい味噌ができます。

味噌づくりを見学してみよう!

「大豆のたんぱく質を麹の力によって旨味に変えていく。」というのは分かりましたが、実際には麹はどのように作られているのでしょうか?
百聞は一見に如かず!味噌の仕込みの様子を見学しつつ、教えてもらうことにしました。光浦醸造では原材料の加工を始めてから樽に仕込み、熟成に入るまでの工程に3日間掛けています。「光うらの麦みそ」が実際にどのように作られているのかダイジェストでご覧ください。

 味噌作り1日目

味噌は使った麹によりできる味噌が違います。麦で麹を作った麦麹と大豆を合わせたものが麦味噌、米麹では米味噌、豆麹では豆味噌となります。

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これが光うらの麦みそに使用している大麦です。この大麦ともう一回り小さな品種の裸麦の2種をブレンドしています。

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まず味噌作りは麹作りから始まります。1日目は朝から麦をよく洗って水に浸し、水を吸わせた麦をこの大きな蒸し器で蒸し上げます。そして、蒸した麦を適温に冷ましてから種麹(たねこうじ)をつけます。

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この白い粉が種麹(たねこうじ)です。麹は熱に弱いため蒸したての高温になった麦につけると麹菌は死滅してしまいます。良い麹をつくるため、温度管理に注意しながら作業をします。

麦全体に麹が行き渡るようにしっかりほぐしながら撹拌したら、麹が好む温度と湿度に保たれた部屋(麹室:こうじむろ)で麹を寝かせます。

 味噌作り2日目

前日に種麹を付けた麦を一晩寝かせたことで麹菌が少しずつ麦全体に広がっています。しかし、まだ麹としては未熟でさらに麹菌を育てていかなくてはいけません。味噌作り2日目の朝は、大きな床の中で一斉に寝かせていた麹をほぐしながら麹蓋(こうじぶた)に分けて広げ、引き続き麹室(こうじむろ)で寝かせます。
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その間、麹が均等にできるように昼と夕方の2回、ていねいにほぐしながら撹拌します。これを「手入れ」といいます。適温(25~30度)に保たれた麹室で活発に育っている麹は熱を持ち、手でほぐすと気持ちのよい温かさです。麹室の中は温度と湿度が高いため、麹室の中での手入れは冬場でも汗のにじむ作業です。

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これが麹蓋(こうじぶた)です。さらにもう一晩、麹はここで寝かせられます。

そして午後にはいよいよ大豆も下処理を始めます。大豆はしっかり洗って汚れを落とし、翌日の朝まで水に浸します。水を吸った大豆は約2.4倍に膨らむため3倍以上のたっぷりの水に浸します。

ここまで味噌作り2日目の様子をご覧いただきました。光浦醸造では昔ながらの製法で一度に多くの味噌を仕込むため、味噌作りは体力勝負の作業であることを目の当たりにしました。私も麹作りを実際に体験させてもらったのですが、翌日は腕がパンパンでした。しかし、その一つ一つの手作業の積み重ねがおいしい味噌をつくるために大切な工程であると実感することができました。

 味噌作り3日目

味噌作り3日目の朝は、前日に浸けておいた大豆の水を替え、茹でて蒸します。この大きな機械はNK缶といって大豆の下処理から蒸煮までできる醸造用の圧力容器です。
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一方、麹は3日目の朝には菌糸が伸びてこのように板状になっています。

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板状になった麦麹は砕かれ、ベルトコンベアで混合缶の中に運ばれます。そこへ塩を入れて混ぜ合わせます。麹に塩を混ぜることを「塩切り」といいます。塩を入れることによりほとんどの雑菌は活動が出来なくなりますが、麹菌は耐塩性ですのでしっかり生育できます。

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さらに蒸した大豆をミンチにしたものと種水(味噌の固さを調整するための味噌と同じ濃度の塩水)も混ぜ合わせます。
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混合缶の中で全ての材料をよく混ぜ合わせたものをベルトコンベアで桶に仕込こんだら、蓋をして重石を載せます。1個約30kgの重さがある重石を味噌を仕込んだ大きな桶の上にスタッフの手で一つ一つ重ねられます。

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桶を味噌の発酵・熟成に適した温度に保たれた常温庫に運び、ここで寝かせ熟成を待ちます。季節によって味噌の熟成に適した環境づくりをするために温度を調整し、発酵・熟成させる期間は長年のデータによって微調整がされています。

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熟成させたら味噌のできあがりです。
熟成期間は味噌の種類によって異なります。光うらの麦みそは、麹をたくさん使っている(=酵素の力が強い)ので熟成期間は2カ月程度となっています。
今までは長く寝かせれば寝かせるほど良いみそなんだというイメージがありましたが、麹と大豆の配合バランスによって最適な熟成期間というのがあるということを初めて知りました。光うらの麦みその場合は、麹の甘みが生きた優しい味わい。具沢山のお味噌汁によく合う山口県のローカルな味わいなのです。

以上、簡単に味噌の仕組みと作り方をレポートいたしました。ここまで長々と読んでいただき本当にありがとうございました。
実際に自身で味噌づくりの様子を見たり体験したりしたことで、四季のある日本の様々な条件(暑い・寒い・高湿・低湿)の中で、年間を通して良い味噌を作るのは大変な作業であることがわかりました。
このレポートでみなさまにも味噌や味噌の製造過程に少しでも興味を持っていただけたら嬉しいです。