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田舎の味*都会の味

大学時代、東京に移り住みいちばん驚いたのは味の濃さ。
蕎麦もうどんもラーメンも丼物も醤油も・・・・、とにかく、全ての食事が濃かった!
それまでも何度か東京には行ったことがあり、味の違いは知っていたつもりでしたが、生活するとなるとその味の違いがボディーブローのように効いてきたものです。
そんなつらい食生活の中、『濃い味=都会の味 』という図式が自然と私の頭の中で出来上がってしまいました。

しかし、江戸時代までは『濃い味=田舎の味』だったということをご存知でしょうか?
織田信長が京都で料理を食べ、「味が薄い!」と怒ると、京都の料理人は「田舎者!」と影で笑っていたというエピソードもあるそうです。

徳川家康が幕府を開く以前、東京は京都から遠く離れたド田舎。ほとんどが農民で、毎日激しい労働に明け暮れていました。
そうした肉体労働に従事している人々は、塩分の濃い食事を求めるため、関東では濃い味を好むようになったのです。
一方、関西は早くから京都を中心として栄えており、労働階級よりは知的階級の人が多かったため、あまり塩分を必要としない薄味が主流となりました。

味覚の違いには歴史的背景があるんですね?。

近年、流通技術が進むに連れて、(ローカルな食べ物以外の)味が全国均一化の方向に向かっているような気がします。
(大手食品会社にとっては、日本人の味覚が統一された方が販売が楽なので好ましいことなのかもしれませんが・・・。)

淋しいことに、何年か後、関東と関西の味の違いはなくなっているのかもしれません。

「東京のうどんは真っ黒じゃけ?食えんでよ!」(山口弁)
という些細な思い出を守るためにも、地域の味は大切にしなければいけませんね。